みなさま明けましておめでとうございます。本年が皆様にとって素晴らしい年となりますことを祈願しております。2024年はAutifyにとって象徴的な年となったので、振り返りと2025年の抱負を含めて、久しぶりのブログポストをします。
2024年の振り返り
2024年はAutifyにとって「第二創業期」と呼ぶほど、変化が大きい年でした。単なるテスト自動化ツールの会社ではなく、ソフトウェアテストのAIプラットフォームを提供する会社として生まれ変わるべく、”Transform to AI Platform for Quality Engineering” というObjectiveを社内で2024年の年初に打ち出しました。
変革には想定以上に時間がかかりましたが、新サービスが形になり、営業組織に新しいリーダーを迎え入れ、2024年の第4クォーターはこれまでにない営業成績を収めることができました。社内のカルチャーも、営業だけでなく社員一丸となってRevenueを作っていくという、数字に拘る姿勢へと変化していった事が、実際に最終クォーターの結果に繋がりました。
AI Platform for Quality Engineering
これまでノーコードツールは多くの会社にご評価頂き導入されてきましたが、一方で課題もありました。「何をテストし、どう自動化すれば良いか」がはっきり分かっていれば、ノーコードツールで簡単に自動化出来ます。しかしお客様の中でそもそもその部分が明確でなかったり、そのようなテスト設計に多くの時間が使われていることが少なくありませんでした。
そんな中2023年に生成AIの波が来て、いよいよテスト設計の部分がLLMで解決できるのではと考え始め、2023年の終わりにAutify Genesisを構想しました。これに加え、Autify ProServiceというQA/テスト自動化のプロフェッショナルによるコンサルティングとリソース支援のサービスを始めることで、ソフトウェア品質業務を頭からお尻まで、AIで自動化・効率化を行うサービスラインナップを揃える、これが我々が定義する”AI Platform for Quality Engineering”です。
コーポレートリブランディング
この方針を実装するべく6月に会社のリブランディングを行い、”HUMAN”というコンセプトを作成しました。HUMANというスペルの中に“AI”が隠れており、「人にはAIが要る。AIには人が要る。」というメッセージで、AIは「人を代替するものではなく、人を支えて創造性を高めるもの」という意味を持たせました。まさしく我々のMissionである “Enhance people's creativity through technology” を体現するコンセプトとなりました。
これに合わせてAutifyのロゴも刷新しました。旧ロゴは「テストが通った」という意味のチェックマークをモチーフとしたシンボルを使用しており、ツールとしての意味合いが強かったため、新しい方向性を実現するためには変更が必要でした。そこで、AI Platformを体現するために、緑のモチーフを矢印に変え、「領域を拡大する」、「前進する」といった意味合いとする新ロゴが出来上がりました。
Series Bの資金調達と韓国展開
市況的にもかなり難しいタイミングでしたが、上記の変革を実現するために2023年後半から資金調達に向けて動きはじめ、2023年末には大方まとまり、2024年の2月に約20億円のラウンドをクローズしました。資金調達は弊社CFOの後藤が主導し、非常にテクニカルな条件面も含め全て取りまとめてくれ、ありがたいことに私が出る幕がほとんどありませんでした。
Series Bは韓国のLGが共同リードを取ってくれ、彼らの子会社で韓国最大のSystem Integratorの一つ、LG CNSと組んで韓国展開を進めることになりました。韓国マーケットはSIが強かったり、日本と似ている部分も多いですが、テストの自動化マーケットはまだ成熟していないため、「なぜ自動化をするべきか」といったピッチをする必要があったりと、日本とはまた異なる難しさがあります。
経営体制の強化
日本の営業チームのリーダーとしてMicrosoft, Apple, Googleで活躍してきた歴戦のセールスリーダーである西田淳氏をVP of Salesに、そしてVP of ProductにAmazonや韓国のCoupangでプロダクトをリードして来たMilan Ramadev氏を新しく迎え入れました。
新たなリーダーシップと個々のメンバーが力強く成長してくれたことにより、今年に向けて大きな弾みとなる、モメンタムを作り上げることが出来ました。
2025年のAutify
2024年は2023年中に仕込んだ火種がようやく着火し、後半に大きなモメンタムへと変わり始めました。今年はこれを「爆発」させる年にしたいと思います。
2023年末に構想した “AI Platform for Quality Engineering” がようやく形になってきており、今年はいくつかの新製品が正式ローンチされ、Platformが完成へと近づきます。生成AIが進化したことにより、今後ソフトウェア開発とQAのプロセスは確実に変化するはずです。
ソフトウェア開発もPost Editingが主流に
言語翻訳のマーケットでは、2016年頃のNeural Machine Translationの登場以降、Post editingが徐々に主流となってきました。Post Editingとは、機械翻訳に下地をやらせて、人がそれを手直しするというワークフローです。機械翻訳の精度が低いと二度手間になってしまうため効果がありませんが、昨今の機械翻訳の精度だと、人が一から翻訳するよりPost Editingの方が生産性高く翻訳を進めることが出来ます。
今後ソフトウェア開発もPost Editingが主流となるはずです。既にCopilotやCursorに一部コードの生成をしてもらってレビューをしているという意味ではPost Editingになってきていますが、Clineのようにより幅広いタスクを高い精度で行うものも登場してきました。コード生成の精度が上がれば人が後から手直しする方が圧倒的に早いので、より抽象度と複雑性が高いタスクもPost Editingへのシフトが加速していくでしょう。
ノーコードからAIエージェントへ
生成AIの進化により、自然言語を入力として複雑なタスクが行えるようになってきました。これにより、ノーコードツールは今後その在り方を見直す必要が出てくるはずです。なぜなら、自然言語でタスクが指示できるのであれば、わざわざノーコードツールの操作を覚えてアプリを作ったり、テストを自動化する必要はなくなるからです。自然言語自体が人間が既に体得しているノーコードと言えます。
Autify Genesisを構想したもう一つの背景は、一昨年ノーコードツールの提供者としてこれに危機感を感じたためです。そのため、Autify Genesisでは自然言語で記述されたテストケースからAIエージェントがテストの操作を行い、その操作を再生可能な自動テストコードにしてくれる形を取っています。これは、最終的に今のAutify NoCodeのレコーディングによるテスト作成体験を置き換えるものになると考えています。
特に重要な部分は、インタラクティブにエージェントと会話できるようになっているところです。入力されたテストケースには不明瞭な部分もあります。その部分を勝手に推測してアウトプットするのではなく、一旦止まってユーザーに聞くという体験を構築しています。人が人にタスクをお願いする際も不明点をコミュニケーションによって埋める訳なので、この体験がないとAIエージェントにタスクを完遂してもらうことはできないと考えます。
ソフトウェアテストのためのAI Platform
前述の通りソフトウェア開発のプロセスは今後確実に変化していきます。その中でAutifyは、単なるテスト自動化ツールではなく、ソフトウェア開発においてテストを包括的に担う、AI Platformの地位を確立していきたいと考えています。前述のAIエージェントはその一部に過ぎません。2025年はその形が具現化されていく年になるでしょう。
ソフトウェアのテストは全世界において、まだまだ人手が多くかけられています。開発に関わる多くの方が本質的な業務に集中できるよう、AutifyのAI Platformを進化させていきます。
2025年のAutifyにもご期待ください!
About 近澤 良
Autify, Inc. Co-founder & CEO。ソフトウェアエンジニアとして日本、シンガポール、サンフランシスコにて10年以上ソフトウェア開発に従事。
2016年にAutifyの前身となる会社を米国にて創業。2019年1月米国トップアクセラレーターAlchemist Acceleratorを日本人として初めて卒業。2019年に社名をAutify, Inc.に変更し、Autifyを提供開始。