Autify創業から10年が経ちました

近澤 良

近澤 良

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Autify 10周年

2026年9月2日、Autify, Inc. (旧Locki, Inc.)は創業10周年を迎えました。10年以上存続する会社が数%だという中で、ここまで来られたことはひとえに、ご支援いただいているお客様、会社を信じて頑張ってくれているメンバーのお陰です。随分遠くまで来られたなと思う一方で、もっとできていたはずなので、まだまだこれからだと思う気持ちも非常に強いです。

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メンバーが僕の誕生日と合わせてケーキを用意してくれました!

10年の節目に、これまでを振り返ってみます。

サンフランシスコでの創業

この会社は2016年9月2日、アメリカのサンフランシスコでLocki, Inc.という名前で創業されました。創業当時はAutifyではなく、事業もソフトウェアテストとは全く関係なく、言語の翻訳支援ツールを開発していました。

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創業時に住んでいたサンフランシスコの自宅。作業机とベッド以外ほとんど何もありませんでした。

2016年当時、私はサンフランシスコにて現地のスタートアップでエンジニアとして働いていました。英語学習に苦しみ、エンジニアとしてアプリのローカライゼーションにも苦労した経験から、世界の言語バリアを解消したいという想いで、仕事終わりと休日を全て費やして、Webサイトの翻訳が簡単にできるアプリケーションを開発しました。それがLockiでした。

開発完了と同時に退職して会社の登記をしました。本当はドラえもんの誕生日である9月3日に登記したかったのですが、「土曜日なので3日には登記できませんよ」と弁護士の先生に言われ、仕方なく2日にしたのも良い思い出です。

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最初にローンチした製品、Locki。JavaScriptのSnippetを埋め込むとWebサイトが翻訳可能になります。

サンフランシスコの会社を退職したことでビザが切れ、30日以内にアメリカを出国しなければなりませんでした。そこからローンチの準備を進め、Y Combinatorに応募するために卒業生に会いまくり、引っ越しも並行するという怒涛のスケジュールの末、9月30日に日本へ帰国しました。

帰国後、製品の最終仕上げを行い、無事ローンチすることができました。「こんな良い製品なのだから、ローンチしたら一気に駆け上がるものだろう」と思っていましたが、そう甘くはありませんでした。ローンチ直後は世界中からユーザーがついたものの、数日で使われなくなりました。

2年半のピボット地獄

そこから始まったのがピボット地獄です。創業から2年半ほどの間、プロダクトはアイデアを含めて8回ほどピボットし、会社名は2回変えました。この数字だけでもどれだけ迷走していたかわかるでしょう。

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転機となったのはAlchemist Acceleratorでした。2018年5月頃に運良く合格のオファーをもらい、8月からプログラムスタートというスケジュールでした。

それまでは翻訳関連で事業を模索していたのですが、翻訳支援ツールというマーケットがあまり大きくないことに気づきました。企業は翻訳自体にはお金を払うけど、アプリケーションの翻訳を簡単にするツール自体の予算はほとんどありませんでした。

そこで、Alchemistのプログラムが始まる前に翻訳のアイデアから離れることにします。「創業時の事業軸やミッションは変えない方が良い」というアドバイスをいただくことも多かったのですが、このままだと小規模なビジネスになる未来しか見えず、新しい領域を模索することに決めました。

そうは言っても「言語の壁を解消する」というミッションを持ってこれまで頑張ってきたので、急に軸がなくなり、何をするべきか分からなくなってしまいます。しかもAlchemistのプログラムが始まる8月までに新しい事業を見つけなければなりません。起業してから大変なことはたくさんありましたが、翻訳をやめると決めた2018年6月〜7月が一番苦しかったです。

ソフトウェアテストの領域へ

いきなり大海原に放り出されて新しい事業を模索するとなっても、選択肢が無限に広がってしまうので、2つの軸を定めました。

1) 巨大な市場であること。翻訳支援ツール事業の失敗の原因は、市場の小ささでした。市場が大きければ最初のアイデアが悪くてもピボットする中で爆発する道が見つかる可能性があります。

2) 私なら勝てること。大きな市場があれば当然競争も激しいです。これまでの経験やスキルを踏まえると、自分にしかできない、自分であれば勝てる事業でなければ大きく成功することはできません。

そんな中、Gartnerの「Prepare for Automation's Impact on Application Development」という記事を発見します。2018年4月に出されたもので、「2022年までに40%の開発チームがAIを共同開発者としてチームに招き入れ、品質保証やテストを始めとして多くの開発タスクが自動化される」という内容でした。当時はAIを開発チームに招き入れるというアイデアはかなり突拍子もないように思えたのですが、今振り返ってみると当たっています。

この記事を見て「AI x ソフトウェアテスト」の領域を攻めるという構想が始まっていきます。まず、テストには開発予算の30%ほどが割かれており、世界規模の巨大市場が存在します。そして私自身、エンジニアとしてテストやその自動化に苦労してきました。この原体験を持つ人でなければ勝てない領域だと考えました。前述の二つの軸が完全に満たされました。

Burning Needsの発見

「AI x ソフトウェアテスト」で事業アイデアを作り、8月からAlchemistのプログラムに参加します。このアイデアはまだAutifyではありません。翻訳のアイデアで合格したのにも関わらず、プログラムの参加時には全然違うアイデアになっていましたが、「まぁそういうこともあるよね」という感じで違和感なく受け入れてもらえました。

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しかしプログラムのOnboardingセッションで、あるAdvisorから衝撃の一言が発せられます。

「6ヶ月後のDemo Dayまでに有償顧客がいないチームは、Demo Dayには登壇させない。」

Alchemist AcceleratorはBtoBスタートアップ特化のプログラムです。BtoBのスタートアップで有償顧客がいないということは存在価値がないに等しいわけですから、この発言はもっともです。しかし我々はピボットしたばかり。事業もまだしっかり定まっていません。同様のステージの会社も周りに多くいたため、会議室内がざわつきました。

それから営業モードに完全に切り替え、3ヶ月で60〜70社と話すことができましたが、最初のコンセプトは全く売れませんでした。起業してから2年間ずっと売れない状態が続いていたので、Alchemistを卒業できないのであれば、もう会社は畳もうと思っていました。プログラムはあと3ヶ月しかないので、ここから有償顧客を獲得するのは不可能に思えました。

しかしこれだけ多くの会社と話したのであれば、その会話の中に何かヒントがあるのではないか。そう思ってミーティングノートを全て見返して、言及されていた課題を洗い出してみました。すると共通項が二つ見えました。

一つは「テストを自動化する人員の不足」、もう一つは「メンテナンスコストの大きさ」でした。ほとんどの人がこの課題について言及していたので、これがBurning Needsなのではないかと気づきました。ここからノーコードでテストが自動化でき、AIがメンテナンスする、Autify最初の製品アイデアが生まれました。

どのようにBurning Needsの発見に至ったのか、詳しくは2019年に書いた記事「顧客のBurning Needsを解決する」をご覧ください。

Alchemistの卒業からAutifyのローンチ

もう不可能だと半ば諦めていましたが、製品アイデアができあがってから約2ヶ月後、2018年のうちに、なんと製品がない状態で契約を獲得できました。2019年の正月休み中にAutifyという名前を思い付き、会社名を変更し、1月後半にAlchemistのDemo Dayの壇上に立ち、無事プログラムを卒業しました。

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日本人として初めてAlchemist Acceleratorを卒業したことをThe Bridgeさんに取り上げていただき、そこから多くの問い合わせが来て、2019年から2021年まではマーケティング費用を一切かけない自然流入のみで売り上げが伸び続けました。

Autifyローンチからの軌跡

Autifyローンチから今日までの7年間はあっという間でした。

2019年は、現在NoCode Webと呼ばれている最初の製品をローンチし、Seed roundの資金調達をクローズしました。

2020年はコロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が出たことで、当時のオフィスを解約しフルリモートワークへ移行しました。売り上げの大きなマイルストーンも達成し、急速な成長を実現できました。

2021年には現在NoCode Mobileと呼ばれている製品をローンチし、待望のモバイルアプリテストのサポートを開始します。そして10月にはSeries Aの資金調達を実施しました。その直後にはSaaSバブルが弾けたので非常に良いタイミングで調達を行うことができました。

2022年から海外展開も本格化し、USにチームを構え、日本国外の大きな契約も取れ始めます。

2023年にはChatGPTが大きな注目を集め始めます。LLMを活用すれば品質保証のプロセス全体がAIで大きく変革できると確信し、LLMの可能性を模索し始めます。

2024年にはSeries Bの資金調達を行い、韓国のLG CNSとパートナーシップを組み、同国への進出を本格化させます。また、LLMを活用した製品Autify Genesisの初期バージョンが完成し、仕様書からのテストケース作成、そしてテストケースの自動化までの一連の流れをカバーできるようになります。

2025年にはNoCode Webの後継製品となるAutify Nexusが正式ローンチされます。また、Genesisの新しいバージョンの開発が始まり、テストを実行するAIエージェント製品Autify Aximoも誕生します。

そしてこれから:AI駆動開発時代の品質保証

2023年からLLMの未来に賭け、2025年には全社をAI nativeへと変革し、今年2026年、AI駆動で品質保証のプロセス全体を自動化するAI Platformを完成させました。また、Platformの製品だけでなく、品質保証のサービス全体をデリバリーするProfessional Service部門も拡大しました。Autifyはもはやノーコードテスト自動化ツールではありません。AI駆動開発時代における品質保証全体を担う会社となりました。

近年、コーディングエージェントによってテストコードは簡単に書けるようになったため、誤解を恐れずに言うと「テスト自動化ツール」は必要なくなったと思います。この変化が起こることは2024年から理解していました。

それに伴い、繰り返しのテストをどう自動化するか、という議論から、品質保証のプロセス全体をどのようにしてAI駆動にしていくかという方向に業界の関心が移ったと感じます。

2026年に入ってから、Mythosを始めとするフロンティアAIモデルの台頭により、金融機関を始めとして各企業に迅速な対応が迫られています。この時にボトルネックとなるのが品質保証です。AI駆動開発を実装する上でも、属人性の高い品質保証が同じく足かせになります。

これからテストは人が行うものではなく、AIエージェントが行うものになります。人は、どのように品質を保証するのかという上流部分に集中し、AIエージェントを管理・監督する立場になります。これを実現するのがAutifyです。

今年2月に米国で先行リリースし、先日のPlatformローンチと合わせて日本でも提供を開始した、テスト実行AIエージェント「Aximo」。米国リリース時に公開した動画をぜひご覧ください。

10年を迎えたAutifyのこれからにぜひご期待ください!

近澤 良

About 近澤 良

Autify, Inc. Co-founder & CEO。ソフトウェアエンジニアとして日本、シンガポール、サンフランシスコにて10年以上ソフトウェア開発に従事。

2016年にAutifyの前身となる会社を米国にて創業。2019年1月米国トップアクセラレーターAlchemist Acceleratorを日本人として初めて卒業。2019年に社名をAutify, Inc.に変更し、Autifyを提供開始。

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